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2007年 07月 23日
![]() 人様の前で三味線を弾くときは毎度毎度精神的にたいへんギリギリな事になるわけです。 が、それでもやめられないのは本番が近づくにつれて増幅していく苦痛とそこから解放された瞬間の快感の反復が癖になっているからだと思います。 あと、楽器というやつは、やればやっただけ(即効性は無くても)かならず身になる、という事をもう私は学習してしまったから。 だからやめられない。 今回はしかし、新曲にもかかわらず稽古期間がひと月ちょっとしか無かった事、そのひと月ちょっとの間で実質的に「弾けた」時間が圧倒的にすくなかった事、土壇場に来て不測の事態がいろいろ起きてまるで集中力が出なかった事、など、主に自業自得による諸々のマイナス要因が積み重なって本番寸前までとっちらかりまくりでした。 諦めるのがいやなのでじたばたしてましたが、結局いまさらどうひっくり返っても暗譜は無理、って事をおとといの夕刻になってようやく承服(遅過ぎ)。 なので、本番では譜をチラ見しながら弾くというズルをさせていただきましてえ(苦笑)。 けどまあ、本番までがなにかとほんとうにしんどかったので、演奏始めちゃったら自分でも意外なくらい愉しめたし、かつてないくらいのびのび弾けたなあと感じます。 まず自分が愉しめれば、それは結果どこかで他のひとも愉しませてるって事につながってんじゃないかと思うから、ま、良しといたします。 M体質だが大枠ではオプティミストな俺(笑)。 ![]() 昨夜はしなければいけない仕事もあったですが、帰宅して風呂入ってビール飲んで『風林火山』観終わったら、9時ぐらいなのにもうねむねむになってしまったので寝ました。 今朝は5時に起きました。 これから仕事します。 今週がこれまた自業自得で比類無き修羅場なわけですが、土曜日のバクホン呑み語りオフを心の支えにがんばっちゃうもん。 ▲
by red_95_virgo
| 2007-07-23 07:14
| 長唄
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2007年 07月 19日
佐々木蔵之介もかくやとばかりのスロースターターな自分なので毎度の事ながら長唄の浴衣会がこの週末に迫りきってしまった今日になっても曲が仕上がってないというていたらく。
毎日じめじめしてるもんだから三味線はぼよんぼよんしちゃうし(湿気に弱い楽器なのです)。 あああどうしようどうしたらいいんだあ。 ブログなんか書いてる場合じゃないじゃないかあ。 ……と、あっちもこっちもかなりやばい感じになってるくせにどうも一向に集中力がでません。 おまけに6月頭に国立の舞台でくじいた左足が、実はいまだに完治しておらず。 そう、長唄は正座して演奏しなきゃなんないの。 捻挫が治ってない足での正座は、ある意味江戸時代の拷問なの。 演奏するのは「五色の糸(ごしきのいと)」。 ご臨終のひとが阿弥陀様の手と自分の手を結んで極楽浄土に連れてってもらうほうの五色の糸じゃなくて、七夕祭りのとき、笹飾りに結ぶほうの五色の糸です。 江戸時代の女の子がラブラブな彼との性的妄想をぐじゃぐじゃ言ってるだけの他愛ない恋の唄で、まあかわいいといえばかわいいといえなくもないが、さほど優れた歌詞ではありません。 「焦がれて見たる聲は鈴蟲」 とかいきなり出られるとびっくりするけどさ(笑)。 ただ作曲が名人《馬場の鬼勝》こと二代目杵屋勝三郎。 めりはりがあってリズムに隙が無くって手もくるくる変わるので、三味線弾くひとにとってはおもしろいです。15分と短い演奏時間ながら、弾き終わると、 「しっかり弾きました」 という感じが残る。 たいへん佳い曲なのです。 鬼勝がこれを作ったのは嘉永五年。 アメリカ合衆国のペリー艦隊が浦賀にやってくる前の年です。 ちなみに江戸幕府十三代将軍徳川家定公は嘉永五年はまだ「家祥」と名乗って将軍世嗣をやってました。 いろんなものが、まだ眠っていたころ。その眠りを覚まされる前の、最後の七夕の風景なんですね。 そう思えば、またちょっと違う景色がみえてくるような気もするなあ。 ってそおゆう妄想でうっとりする暇があったら稽古しろ自分。 ▲
by red_95_virgo
| 2007-07-19 18:42
| 長唄
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2007年 06月 08日
昨日は、
「国立劇場で“越後獅子”を弾く」 ってやつにトライしてきました。 当日のリハまで音がちゃんと自分のなかに入っていなくてかなりの綱渡りだったんだが、例によって本番では火事場の馬鹿力がなんとかやっつけてくれました。 やはり自分、著しいM体質(byあっちゃん)なのだろうか。 常に追い込まれていたほうが、出るもんが出る人間なようです。 出るもんが出てくれたのは良かったんだが、あろうことか舞台で怪我をしてしまいました。 演奏が終わって雛壇から降りようと思ったところ、左足首を捻挫しまして。 足が痺れてるのに無理に立つと、たいがいこれをやっちゃうんですけど。 だからいつもは注意して、時間かけて足を慣らしてから立つようにしているんですが、転換の時間があんまり無いから急がなきゃ、という焦りがあって気づいたら ぐぎ。 とか音がしてた。 いやあんまり音がでっかく響いたもんだから(自分の頭のなかで)、一瞬、骨が折れたか腱が切れたかしたと思ってさすがに青くなりましたが、ただの捻挫で良かった。 良かったけど、ほんとに詰めが甘いと思うよ自分。かっこ悪いったらありゃしない。 一晩経ったらくるぶしがぱんぱんに腫れちゃって、とりあえず湿布でおさえてますが、左足をひきずらないと歩けません。でも、 「わーお、『孤独の賭け』のマッキー先生ごっこー」 とか、なんか朝から楽しいぞ。転んでもただは起きない(違)。よかった著しいM体質で。 私らが演奏したのは小劇場のほうですが、大劇場ではいま、こんなのをやってます。 国立劇場では楽屋口に大きな下足箱がありまして、出演者の名札がある場所に各人が靴を置くシステムになってるんですけど、大劇場出演者用下足箱の最上段に扇若さん、彌十郎さん、孝太郎さんが並んでまして。 三者三様のお靴のサイズ違いが一目瞭然で、捻挫そっちのけでものすごいおもしろかったです。 ▲
by red_95_virgo
| 2007-06-08 12:41
| 長唄
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2007年 05月 12日
邦楽のほうでよく使う「下ざらい」という言葉。
ニュアンスが近いところで言い換えるならば、「リハーサル」でしょうか。 個々でお稽古を積んできた人たちが、公演前に何度か集まって通し稽古をする事をそのように呼びます。 長唄ならば、唄方、三味線方、囃子方が当日の舞台の形に並び、出のきっかけやテンポを決めながら、一曲を通しで演奏していきます。 このたびこちらの会で「越後獅子」を弾かせていただく事になり、昨日池袋でその下ざらいに参加してきました。 三味線が9人、唄が11人、囃子方も11人、そこに今回はお琴が加わるので総勢38名のビッグバンド。 人間の生声+アンプを通さない生楽器の集合体のやかましさといったら、そりゃものすごうございます。自分の返り音なんか初手から聞こえやしねえ。勘所だいじょぶかしらとか、素っ頓狂な音出してやしないかしらとか、どきどきします。 お琴と共演というのもはじめて。 「越後獅子」には「濱唄(はまうた)」と呼ばれるパートがありまして、 海浜で唄われるのんびりした唄 という身も蓋も無い解説通りの、お客様がしばしばお眠りになりがちなところですが、今回はここにお琴が絡みます。 なにこのアバンギャルドさ? 鄙びた海浜風景のなかでのんびり唄うたってたら海の彼方から謎の地球外生物がお迎えにきました、みたいな感じになっちまってます。 畏るべし、コロリンシャン。 「越後獅子」は、音楽の授業のレコード鑑賞なんかでもよく使われる、ポピュラーな名曲として知られていますが、もともとは九代目杵屋六左右衛門さんが文化8年3月に三世中村歌右衛門の依頼を受けてひと晩ででっち上げたまったくのやっつけ仕事だそうです。 やっつけ仕事でこの出来かよ。 さすが、江戸期の名人というものはものすごいものでございました。 名人はやっつけ仕事が可能でも、弾く側は凡夫ゆえそうはまいりません。 うかうかしてたら本番までひと月切っちゃったよーん。 精進します。 ▲
by red_95_virgo
| 2007-05-12 12:14
| 長唄
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2007年 04月 01日
昨日は14時から22時までまんべんなくワインを飲んでいた、極楽のような日でありました。
17時で花見撤収後、 晴信様がカピバラに似ている件 について熱く語りつつコリドー街のPRONTOでお茶。 「佐々木蔵之介さんが“ハンサムなラクダ”と呼ばれている件」はファンの間じゃ周知ですが、今年の大河は鑑賞の角度をちょっと変えれば齧歯目と偶蹄目の共演とも言えるわけで、日曜8時がますます楽しみですね。 ちなみに私の実家からも近いこちらでは、カピバラさんの温泉入浴ショーが見られますよ。 脳内がすっかりカピバラ色に染まってしまってちょっと困りながらも、18時からワインバーギンザで伝の会のライヴ。 伝の会のおかげで、「ちゃんとしたホール+お着物のおばさま客が大多数」以外のシチュエイションで長唄を聴く機会が飛躍的に増えましたが、「バーでお酒をいただきながら」ってのははじめてです。 壁を飾る2枚のミュシャの絵が印象的な、クラシカルな店内。しかしいったいどこでお弾きになるんだろうと思ってたら、カウンター横、スツールにお座りになっての演奏。 私たちの席は、日本武道館にたとえるならばさしずめ北西スタンド(笑)。 アーティストさんを右斜め後ろから拝む形でございます。 正面向きじゃないアングルから三味線を弾く人を見るというのはなかなか新鮮でした。見えないところまで見えるもんです。 2ステージの演奏のあと、アンコールに「二人椀久」を弾いてくださって(リクエストにお応えくださってありがとうございます)、終演後はしばしのご歓談タイム。 自分が三味線を稽古していて気になるのは「フォーム」です。 撥を持つ右手を胴にのせるときの位置、撥先と撥皮との角度。この関係がなかなかしっくりこなくて、師匠にもときどき注意されます。演奏中に位置を直したりする事もしばしば。 太極拳をやっていて学んだ事ですが、 「決められた型にちゃんと入ったとき、自ずと正しい効果は生まれる」 という事。 たとえば弓道なんかにも、「型に入れば矢は必ず当たる」という発想があるでしょう。 武道と楽器を一緒にはできないが、どんな楽器も「弾く型」は基本的に決まっているわけで。 三味線はエレキギターとかと違って演奏中に大きな動きが無いから、プロの演奏家の演奏を見ていると、「微動だにしない」みたいな感じに見える。 三味線を持って撥を構えれば、ほとんど寸分の狂いも無く「ベストな型」にパチッとはまる事ができるんだ、自分なんかだめだめじゃん、と思ってましたが、テツクロさんのお話では必ずしもそうではないそうで。 ちょっと安心をいたしました(笑)。良いお話をありがとうございます。 伝の会は、10月13日(土)に紀尾井ホールで本公演が決定しています。もう手帳に書いてます(笑)。 これが本公演のチラシ。 ![]() 目元がそうとうりりしい邦さん(向かって左)。 ![]() その裏にいただいちゃった邦さんのサイン。わーい。 ところで畏れ多い事ですが、自分、この6月に国立劇場小劇場に出さしてもらえる事になりました。「越後獅子」弾きます。お琴と共演なんだって。国立に出さしてもらえるなんて滅多に無い経験なので、緊張しつつも、まずは楽しみたいと思います。 ▲
by red_95_virgo
| 2007-04-01 14:01
| 長唄
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2006年 12月 01日
チケットを予約したときにはまさか当日、仕事がこんなど修羅場になるとは思ってもみませんで……かなり青息吐息で辿り着きましたお江戸上野広小路亭。
初めて訪れる小屋です。こぢんまりしてるくせに結構立派な全自動引き幕だったりして、ちょっとおさらい会なんかで使ってみたい感じ。 どういったことになるのか?本番にならなきゃわからない状態なのです。 という主任松永鉄九郎さんの前置き付きライヴ、中入ありの2時間ちょっとで5ユニットが出演されましたが、もう、すーげえおもしろかった!! 【スクイーズ☆ハジキーズ】 鉄九郎さんのお弟子さん、松永鉄駒さんと松永鉄六さん、女性ふたりによる三味線ユニット。 虫の合方、佃の合方、“わらの中の七面鳥”(いわゆる“オクラホマミキサー”の曲)の三味線によるカヴァー(牛入り・笑)を挟んで、打合せの合方まで、聴かせていただきました。 「打合せ」というのはどういうものかといいますと、 三味線の合または合奏で、互に一間または半間づつ食いちがわせて奏することを主題とする合の手。 というやつで、要するに二挺以上の三味線で掛け合いをやるものなんですが、実際に稽古してみると、食いちがわせて弾いたそれがひとつの旋律に聞こえるまで、息が合うまでがなかなか難しい。 私、ただいまお弾きぞめ用に「新曲 胡蝶」をお稽古しておりますが、 「二羽の蝶がつかず離れず戯れ飛ぶ」 という主題そのまんまの打合せのとこがえらく難しくて泣いてます……。 スク☆ハジさんの打合せ、早間なのに息ぴったりで、お見事でしたです。 【サンシチローズ】 唄方の杵屋三七郎さん、三味線方の阪本剛二郎さん(長唄東音会)、大澤佑さんのTHE3名様で「都鳥」をなさいました。 「都鳥」は演奏時間約8分と短いながら、隅田川に浮かぶ舟の上の夏の一夜を描いた、情趣に富んだ色っぽい曲で、大好きです。 三七郎さんの解説によれば、これはもともと舟の中で客を取る遊女を描いているという事で、家帰って調べてみたら、タイトルの「都鳥」というのもそうした遊女を表す隠語である、という説などもあり。 遊女と客の一夜と思えば曲の印象も変わってきますが、三七郎さんが仰るように、波の上で枕を交わし、短夜を惜しむ恋人同士の情景として感情移入して聴くと、大変素敵。 いつかこれを弾き唄いできるようになりたいものだなあ……。 昨日は、長年贔屓にしている「劇団河馬壱」の役者さんで、私の数少ない(ていうかほぼ1名の)長唄友達でもある灰吹屋さんとご一緒しました。灰吹屋さんは先日の勉強会の折、三七郎さんの立唄で「五色の糸」を弾かれたので、その縁でお声掛けしたんですが、 「三七郎さんがあんなにしゃべる人だとは思わなかった(笑)」 との事でございます。 鉄九郎さんには「アンパンマン」だの「なかやまきんに君」だの言われ放題な三七郎さん、新春1月3日スタートの「志の輔らくご in PARCO 2007」にもご出演されるそうです。 【カワシマ夫妻】 囃子方の川島佑介さんと、奥様で三味線方の杵屋寿さん、おふたりによるユニット。 「川島佑介さん」とお名前だけ拝見しても、 「え、誰?」 だったんですが、舞台に現れた川島さんを見たら演奏会でしょっちゅうお会いしているお顔。 すいません、お顔とお名前、きっちり一致しましたから。忘れようったって忘れられませんから(笑)。今後演奏会でお見かけしたら、心の中で 「川島さーん(はぁと)」 と声援おくらせていただきます。 川島さん、まずハードケースの中から分解された状態の小鼓を取り出され、組み立てるところから見せてくださいました。鼓ってこうやって組み立てていくのかい! 完成品しか見た事ないのでえらい新鮮です。 俳優の堺雅人さんは『出雲の於国』で鼓打ち三九郎の役をなさったとき、自ら鼓を購入してカラオケボックスで自主練に励んだそうですが、どっかぶきっちょそうな堺さん、一度分解した鼓をもう一度ちゃんと組み立てる事ができたのかしらねえ……とそんな余計な心配までよぎってしまいます。 初心者同然の状態でいきなり人間国宝・堅田喜三久師のところに押しかけて教えを請うたという、小鼓独奏曲「重陽」の一節を演奏。 さらに、寿さんの三味線との合奏、ラストは「勧進帳」の瀧流しの合方で締め。 小鼓と三味線、それぞれひとりの奏者による合奏という形態をみるのもはじめての事で、しかも「瀧流し」をおひとりでというのは相当ハードだろうと思いますが、すんばらしかったです。 舞台にずらりと並んだ大人数の演奏風景を見慣れてしまうと、長唄とはそうした様式なのだ、という刷り込みができてしまいますが、とんでもない事ですね。 音楽の持つ可能性は無限です。 【ROCK SHOW GO】 短い中入の間から、幕の向こうでエレキギターだのサックスだのが鳴ってるので、なにが始まるのだろうとちょっとドキドキしておりました。 ギター:杵屋六昶悟(ろくしょうご) サックス:杵屋三美郎 パーカッション:川島佑介 三味線:松永鉄九郎 による、えー、これってフリージャズすか? ノイズミュージックすか? とにかくそういうセッションです(笑)。 「どういったことになるのか?本番にならなきゃわからない状態なのです。」を地でいくわけのわからなさ。いや、こっちはおもしろかったですけども。 ロック少年だったという鉄九郎さんの演奏されるハードロックなんかも、いつか聴いてみたいものだなあ、と思いました。 【たぬきを演奏する会】 「たぬき」というのは長唄の曲名ですが、私、聴くのはこれがはじめて。 三七郎さんの唄、鉄九郎さんの三味線。川島さんが按摩さんの笛から太鼓、鉦までの鳴物担当。そして鉄六さんは三味線の他に犬の声も担当(笑)。 寓話的で、情景描写の豊かな、すごくおもしろい曲ですが、やっぱり三味線がなんたってすごい。 粋で軽妙、しかもエッジが立っててハード。そして速い。かっこいいです。 前から三列目どセンターで鉄九郎さんの指、ガン見させてもらいました。 音源欲しいなあこれ。 この曲を聴いていて、そしてライヴ全体をみて感じた事ですが、三味線音楽が隆盛を極めた江戸時代って、たぶん音楽そのものがもっと生活にぎゅっとひっついていて、そしてもっとフリーで、なんでもありなものだったんだろうなあ、と。 いつの間にか長唄は「伝統芸能」になってしまって、馴染みの無い人にとっては姿勢を正して聴くもの、難しいもの、肩の凝るもの、退屈なもの、といった印象を纏うようになっちゃった。 そういう、ある意味神棚に祭り上げられがちな音楽を、もう一度私たちの、江戸時代じゃない、21世紀の「日常」と同じ目線まで下ろしてみよう、という試み。 伝の会のライヴにも昨夜のライヴにも、そうした意気を感じます。 それは、いわゆる懐古趣味から発したものでは決してなく。 ジャンルや決まり事や様式の枠をなくしても、「音楽そのもの」は損なわれる事無くそこに純粋にあり続けるという事を改めて発見する喜び、なんだと思います。 「淫声なるもの」 「聴く人の淫心を動かす」 と言われた楽器である三味線の音が、奏者や聴き手の血の中のねじを一本、すっと外す瞬間。 上野広小路の小さな小屋で、またしても、そういう素敵な経験をさせていただきました。 ▲
by red_95_virgo
| 2006-12-01 15:01
| 長唄
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2006年 10月 04日
「どうして三味線を始めたんですか?」
という問いには大概、 「歌舞伎を好きになったのがきっかけです」 とお答えしていますが、実はそれはかなりの部分で建前に過ぎません。 私がティーンエイジャーの頃、第一次坂東玉三郎ブームというのが来ました。 やまとのきもののカラー全面広告が全国紙上を飾っていて、この世のものとも思えぬ玉さんの美しさに陶然となりながら切り抜きなどしていましたが、そこから一足飛びに 「三味線のお稽古したい!」 になったわけでは無い。その底にひたひたとあるもの、それは 必殺シリーズ です、はい(笑)。 足袋妄想のコメントにもちらりと書きましたが必殺シリーズ第四弾『暗闇仕留人』。 西崎みどりさんの歌うEDテーマ“旅愁”でお馴染みの本作は、時代設定が幕末という事もあり、当時新選組はまりかけだった私にはかなりぐっとくるドラマでした。 仕留人のひとり糸井貢は、インテリ蘭学者なんだけれど、病気の奥さんを抱えて芝居小屋の三味線弾きをやって生計を立てている、という設定。殺しの道具も撥に仕込んだ刃物でした。 これを、当時の二枚目代表ともいえる石坂浩二氏が演じておりました。 黒御簾の後ろで、白い額にはらりと前髪を垂らして伏し目がちに三味線を弾く貢さんの陰影の濃い姿は本当に素敵で、ここでまず、私の中で「職業的三味線弾き」のファーストイメージが固まったと言っても過言では無い。 とはいえ 「私も撥で人殺しをしたいよう!」 と思ったわけではありませんけれど。 ありませんけれど殺しの小道具としての象牙の撥、ひいては三味線という楽器そのものを、えらいかっこいいアイテムとしてまず認識。 そしてそのあとに『新・必殺仕事人』のおりく(山田五十鈴)・勇次(中条きよし)という、三味線美人親子の駄目押しも無論あったりなんかするわけです。 長唄の稽古を始めて象牙の撥というものを購入したときには、家でこっそり必殺ごっこに興じてみたりもしましたさ。 必殺シリーズの次に来たのが他ならぬ土方歳三。 ご存じの方も多かろうと思いますが、土方の許嫁と言われる於琴さんは三味線屋の娘さんです。 大内美予子先生の『土方歳三』には、宇都宮で負傷して、東山温泉で療養する土方を、はるばる訪ねてきた於琴さんが看護するというくだりがあり、ふたりがそれぞれ清元の曲を弾き合う場面が出てきます。 三味線という楽器を媒介にした大人の男女の交情が、めっぽうエロいなあと思った。土方歳三という美しい男性が、その腕に三味線を抱くところはどんなにか佳い景色だろう、とドキドキした。 だから『新選組!』で山本耕史くんが三味線を爪弾くシーンが登場したとき、私はとても嬉しかったのです。 更に、有吉佐和子先生の小説『一の糸』。 これは文楽の世界が舞台。ヒロイン茜が惚れる三味線弾き露沢徳兵衛は、狷介孤高な名手で、しかもクールな美貌の持ち主。ええもうぞっこん殺られた。 義太夫の場合は(だけじゃないかも知れませんが)、太夫(語り)と三味線ならば、太夫のほうがえらいんだそうです。 つまり、アーティストとしての立場が上なんだそうです。当然ギャラも太夫のが高い。義太夫は大概が一挺一枚、舞台の上で、太夫と三味線が一対一で斬り結ぶわけで、それはもう、声と糸との闘いであり、そこにそうした裏の事情や、己の芸に対する互いの自負と矜持、などなども絡みついて、この物語は本当に、「ああ、たまらん……」なのでした。 そんな感じですっかり三味線への憧れを形成されたわたくし、とうとう自分で弾きたくなっちまって、長唄のお稽古に通うようになった次第でございます。 えー、もんのすごい長い前置きでしたが、だから 「どうして三味線を始めたんですか?」 という問いにこれをすべて語っていたらとてもめんどくさい事になるわけで。 でも、そういっためんどくさい諸々を踏まえて「伝の会」のライヴを観ているところもあったりするわけだ、俺は。(ああやっと本題・笑) 「生聴き80分」と銘打ってはいるものの、実際のライヴ時間は軽く80分超(笑)。たっぷり聴かせていただきました。 「吉原雀」から始まって、伝の会オリジナルの「鬼ごっこ」(二挺の三味線が絡みもつれ追いかけ合う様はまさに鬼ごっこ)、そして、実際の芝居における下座音楽の様々な合方をひとつの情景の中にまとめた、「浅草裏の場」。 隅田川の波音を表すときに使われる「佃」で始まって、浅草寺の鐘の音がぼぉーんと響くと、それに驚いた蜩が鳴きながら飛び立つ様を捉えた「忍び三重(=ひぐらし三重)」へ。 「三重(サンジュウ)」とは、座右にある『長唄名曲要説』巻末の術語解説を引用しますと、 或る章句の冒頭または結びに使う三味線の手の総称で、色々な種類がある。 というものでございます。 長唄の稽古してるくせに下座音楽に関してはまるで盆暗な私、「東上総」とか「忠弥」とか「どんたっぽ」とか、それぞれの合方に付けられた名称がまず珍しい。 どうして、尾羽打ち枯らしたような侘びしい武士が登場するところの音楽が「東上総」という名なのか、意味が気になって仕方が無い。 「ちゅうや」なんて「昼夜」だと思ってたら、丸橋忠弥の「忠弥」だったりするし。慶安の変に関係があるんでしょうか? あるいは、単に「江戸で浪人が捕縛される」という記号だけなんでしょうか共通するのは。 あとで邦寿さんに伺ったところによれば、今じゃただ名前だけが残っているだけで、命名された当時、どういう事情があってそういう名前がつけられたのか、もうわからなくなっているものがほとんどなんだそうです。 さらに、伝の会オリジナル楽曲「からすの恩返し」。 からすの「邦子ちゃん」(わはは)を助けてあげる青年の名前が「九郎」で、そう来りゃ当然、 九郎=crow=からす って事なんだな、うむ。とか思うじゃないすかこっちは。 作った当時はそういう事はまるで考えてなかったそうです(笑)。 後半は古典のつるべ打ち。「勧進帳」の「瀧流し」、そして、 「唄も三味線も最高の技術を要する難曲」 と言われる「二人椀久」。 圧巻でした。 長唄の演奏会は大抵がホールで、わりとお行儀良く畏まって拝聴する感じなのですが、ライヴハウスでは非常に「生」な距離感で、三味線二挺が生み出すパワーが正面から来る。これは本当にすごい。 音楽を表現するときには感情をあからさまに出してはいけない、というのが、乱暴に言えば長唄の様式美のようなもんか、と思います。 ロックや合唱といった西洋音楽で育った私にとって、これはすごく困難な事。 長唄の三味線は、弾くときに頭でリズム取ると注意されるし、身体の外に向かおうとするリズムを「様式」で封印されて、じゃあどこで「ノリ」を感じ取るかといえば、これは私個人の見方に過ぎないんですが、「指」なんですね。 どういう音楽であれ、楽器を演奏する演奏者そのものの姿をじっくり見るのが私は大好きですが、こと長唄だと、やっぱり自分が勉強したいという気分も手伝ってか、指ばかり舐めるように見てしまいます。 邦寿さんも鉄九郎さんも、そりゃ色っぽい指なんですもん、ええ。 終演後は前回同様打ち上げに参加、芸能に造詣の深い皆様の、とてもおもしろいお話をいろいろと伺わせていただきながら、うまい酒のみました。 邦寿さんの青春時代のやんちゃ話とか、聞いてて 「ああもうどうしよう……」 ってぐらい萌えさしていただきましたですよ、ありがとございました(笑)。 次の東京でのライヴ(来年)が、早くも楽しみです。 ▲
by red_95_virgo
| 2006-10-04 23:33
| 長唄
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2006年 09月 18日
![]() 巣鴨・studio FOURさんでのコラボライヴで、初めてその演奏を拝聴してから早半年。 杵屋邦寿さん・松永鉄九郎さんの長唄三味線ユニット「伝の会」の本公演に行ってきました。 15日夜の部の演目は ●「松の緑」 ●「外記猿」 ●「秋の色種」 の3曲。どれも過去にお稽古をしたお馴染みの曲ばかり。 「松の緑」は、長唄三味線のお稽古を始める人がたいがい最初に習う曲です。 調子は本調子だけで転調無し、演奏時間約8分というコンパクトさが初心者向きとされる所以のようです。 お稽古し始めの頃はわかりませんが、何年も経って振り返ると、実はこれ結構難しいんだな、という事がわかる。そういう曲です。演奏会でこれ、すごい久しぶりに聴いた。 「外記猿」は、唄も三味線もとてもノリが良いポップな曲。 過去にお弾き初めで2回演奏する機会があったけど、しかし2回ともまるでだめ夫な出来で、好きな曲だけに悔しくってなりません。三度目こそはリベンジを!と固く心に誓っている身としては、今回は願っても無いお勉強の機会。 タテを弾くのは鉄九郎さん。邦寿さんが上調子。 同じフレーズを繰り返す箇所がいくつか出てきますが、1回目と2回目ではニュアンスを変えていたり、めりはり、緩急というものをかなり色濃くつけた演奏でした。ものすごく参考になりました。つってもまんま完コピしたら師匠に 「それ、どこで覚えてきたの」 と注意される事は必定だが(笑)。 最後は、今の季節にもタイムリーな「秋の色種(いろくさ)」。 江戸末期、芝居のBGMであった長唄を独立した音楽として聴かせる「お座敷長唄」というものが成立しましたが、「吾妻八景」とこの曲はその嚆矢ともいえるものです。 秋の虫がすだく様を三味線の音で表現した「虫の合方」が、プレイヤーのテクニックをアピールできる聴かせどころ。「外記猿」とは逆に、タテが邦寿さん、上調子が鉄九郎さんです。 これまでおさらい会などで弾いてるのを聴いても、ただ「優雅な曲」という印象でしたが、「伝の会」の「色種」は相当パワフルでちょっとメカラウロコ。 この唄の歌詞は弘化2年に「南部候・佐竹利済」が作詞したというのが通説ですが、南部藩のお殿様は代々「南部氏」で、佐竹という姓ではありません。 南部利済(としただ)という南部藩主は確かにいらっしゃいますが、もしかして秋田藩の藩主・佐竹氏と姓がごっちゃになって伝わった、って事かしら。 関係無いけどこの頃、土方歳三はまだやっと10歳ばかりです。 長唄の発表会、おさらい会といいますと、だいたい午前11時頃に始まって、午後7時頃までベッタリひたすら長唄まみれの長唄マラソンです。途中でぐうぐう寝てるお客さんも普通にいます。 昨年の私どもの会ではラストに「君が代松竹梅」で日本舞踊を見ていただきましたが、通常はほぼ演奏だけ、勿論MCなんかあるわきゃあ無い。 「伝の会」さん、改まった本公演だとどんな感じのライヴなのかしらと思ってましたが、通常の長唄演奏会の常識を打ち破るような、一曲終わるごとに解説といいますか漫談といいますか、おふたりの爆笑トークが挟まる形式。各曲の成立の歴史や聴かせどころ、歌詞の説明など、大変おもしろくわかりやすくしていただきました。 根がハードロック育ちの私は、歌舞伎というものにロック的な匂いを感じ、そこから長唄に憧れてお稽古を始めたんですが、「伝の会」さんのライヴを観ると改めて、 「ああ、長唄お稽古してきてほんとに良かったな」 としみじみ思います。 長唄はすごくかっこいい音楽なのだという事を、邦寿さん鉄九郎さんのおふたりは、予備知識ゼロの人にもきちんと届くように、ものすごく明快に伝えてくれる。 烏滸がましい言い方ですが、同じ音楽をやっている者として、 「ありがとうございます」 って感じがします。 「色種」が終わって、鉄九郎さんのお師匠様・松永“ハンカチじじい”鐵十郎師71歳も加わると、世界は済し崩しにトリオ漫才の様相を呈し始め。 いきなり“愛の終着駅”歌うわ、客席に身を乗り出して 「糖尿なんですよ」 とぶちかますわ、弟子のステージをかっさらいまくって悠々去って行かれた鐵十郎師のラブリーなキャラの立ちっぷりに惚れ惚れしつつ、お江戸日本橋亭を後にしました。 ![]() 三味線を弾くときに左手の親指と人差し指にひっかけて棹を滑りやすくする、三味線やる人の必需品です。 邦楽専門店で売ってるのは結構くどい色のばっかりで、こんなかわいい指掛け探しても見つからないので即購入。 ![]() 太い輪っかを親指に、細い輪っかを人差し指にくぐらせて装着します。 「伝の会」、次のライヴは10月3日(火)、 伝の会生聴き80分庚申塚編@巣鴨studio FOUR でございます。仕事の都合がつけば、ぜひ行きたいと思います。 ▲
by red_95_virgo
| 2006-09-18 02:54
| 長唄
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2006年 07月 22日
べつに楽器に限らずでしょうが、己自身が一つも切羽詰まっていない時期は、集中して稽古しようと思えば思うほど、どんどん空回ってだめになってゆきます。
当たり前です。死ぬ気でやってなんかいないからです。 まだ、あとに引く余地があるのを小狡く承知しているからです。 まだ大丈夫。 まだ本番まで日数あるし。 7月に入ってからがんばればなんとかなる。 といったように、際限無く自分に甘くなります。 しかし怠惰の罰はきちんと当たるものです。 頼みの綱の7月は、ほんとだったら6月中に終わる筈だった仕事が遅れに遅れてどぉっと入ってきたりして、稽古に当てる時間がみるみる削られていったりする。 この前の水曜日が浴衣ざらい前の最後の稽古だったのですがもうその出来ときたら最悪。 「いつもはちゃんとできる人なのにねえ。よっぽど忙しいのね」 と、師匠は嫌味で言ったわけではないのだろうが、そういう一言が耳に刺さります。 「ああもうだめだ……俺はダメ人間のまま一生を終わるのだ……」 と弱音吐きごっこを繰り返しながらも、それでも生きていかざるを得ない。 開き直ってきのうおとといは、通常の倍のスピードで仕事を片付け(ひとつ切羽詰まるだけで関係無い方面の能率もぐんとアップするので、二六時中切羽詰まっていたほうが良いかも知れません)、自主トレ時間を無理矢理捻出。今朝なんか6時起きして朝練なんてやってしまいました。 今、本番終わって家に帰ってきたところですが……おそろしいもので、ほんとになんとかなりました。 間違えたところもいくつかありましたが、水曜日のあのよろよろの惨状から、火事場の馬鹿力とはいえここまで這い上っただけでも、まあ良しとしようじゃないか。 師匠にも、 「相当練習したでしょう」 とニヤリとされてしまいました。図星です。不肖の弟子ですみません……。 やっぱり、 「絶対に諦めない」 という『アストロ球団』の教えは本当に偉大だと思います。 超人の力は無くとも、できるところまではなんとかやってみるものだな。 問題の曲は「雨の四季」。 ぐずぐずじめじめしたこの気候には、幸か不幸かぴったりはまってしまいました。 でも、本日めでたく引導渡したので、ここらでそろそろかっきりと梅雨明けして欲しいものです。 ▲
by red_95_virgo
| 2006-07-22 15:07
| 長唄
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2006年 03月 31日
以前、立川志の輔師匠の「ひみつの落語会」(爆)で初めて訪れた巣鴨のstudio FOURさん。
昨夜はここで、長唄三味線ユニット「伝の会」とジャズのコラボライヴというものを観てまいりした。 「伝の会」とは、長唄三味線方の杵屋邦寿さんと松永鉄九郎さんのユニット。結成は平成元年だそうで、私が長唄三味線のお稽古を始める前の年です。 そんな昔っから活動されてたなんて全然知らなかった……。「伝の会」のお名前を知ったのもやっと昨年という非常に迂闊な私をお許し下さいまし。 ライヴの前座は落語。 志の輔師匠のお弟子さん、立川志の春さんが「金明竹」をなさいました。おお懐かしいな。高校の落研時代、1級上のK先輩が得意にしてた噺です。 志の春さんの出囃子も鉄九郎さんが弾いておられたのですが、ちらりと“スモーク・オン・ザ・ウォーター”の前弾なんか挟んでらして、こちとらニヤリだったです。HPのプロフィールによれば鉄九郎さんはもともとロック少年だったそう。なんと高校があの日大豊山! イエロー・モンキーのヒーセこと廣瀬洋一さんの先輩にあたられるのだった!(もしかして学生時代に対バンとかしてるかも……?) 志の春さんのあとに、「伝の会」のおふたり登場。 長唄の演奏会というものは、舞台後方に唄方と三味線方、前方に囃子方がずらりと並んで、一つの曲を通して演奏していくという形式で、勿論演奏者はMCなんてしないのが普通です。 でも「伝の会」さんのライヴは、長唄の事をまったく知らない、初めて長唄を聴くという人もその世界に入りやすいように、演奏の合間に、三味線の音が表す情景描写や技法などについての解説を挟んでくださるというユーザーフレンドリーな構成。 たとえば昨夜は「本手」と「替手」についての解説をなさったあと、「岸の柳」の前弾を例にとって、実際に本手と替手が絡むとどう聞こえるか、というのを弾いてみせてくれました。 なるほどこれはものすごくわかりやすい! でまたおふたりの解説が解説というよりも三味線漫談と言いたくなるようなノリ。 「真夏の雪だるま」こと邦寿さんがボケ、役者顔の鉄九郎さんがツッコミという役割分担も絶妙です。お客さんは終始笑わされっぱなし。MCで熱くなって演奏でクールダウンというかなり本末転倒な感じになっちゃってました。 とはいえ勿論肝心の演奏はお見事。 のっけから「勧進帳」の「瀧流しの合方」という超絶に難しい速弾きをバキバキぶちかます。三味線てそもそも生音がでかいので、二挺弾きでも巧い方が弾く「瀧流し」はど迫力でございました。 「伝の会」のあとは、studio FOUR主宰・西島由紀子さん(b)、元岡一英さん(p)、天川洋一さん(ds)のトリオによるジャズのセッション。酒呑みながら聴くジャズのライヴ、久しぶりで気持ちよすぎ。 ドラムスの天川さんという方が小柄な初老の紳士なのですが、上品なスーツにネクタイをぴしっと締めたスタイルで演奏してらして、そういうのに弱い私はちょっとポーッとなっちまいました……。 「コラボライヴ」というタイトルではありましたが、べつにジャズと長唄三味線が鎬を削ってジャムる、みたいな展開にはなりませんでした。最後にまた「伝の会」さんが登場、「京鹿子娘道成寺」の合方を弾いたあと、トリオの演奏にのせて邦寿さんが“マイ・ウェイ”を熱唱、間奏に鉄九郎さんの三味線が絡んで(あとで伺ったところ、調子は三下りだそう)、ライヴは終了となりました。 そのあとの打ち上げにも参加しまして、おいしい酒を呑みながら邦寿さん、鉄九郎さんとお話させていただいたのも、とっても楽しかったです。 帰り際に小娘並みに頬を赤らめつつ天川さんともちょっとだけお話。 「いつもスーツで演奏なさるんですか?」 と伺ったところ、 「いや、会社帰りなんです」 とのお答え。 会社の帰りにジャズのライヴにふらりと現れて、ドラムを叩かれるだなんて。 そんな素敵な上司の下で働いてみたい。 ▲
by red_95_virgo
| 2006-03-31 23:49
| 長唄
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