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2008年 08月 15日
「石田三成の忍城攻め」
ときけば、三成スキーならば「ああ……そんな時代もあったわね……」と、なかなか遠い目になってしまったりもするわけですが。それにしてもなんだって秀吉はあんなに水攻めがすきなんだ。 そういうものをテーマにした物語だというので、いずれは読まんとな、と思っていましたが、「とはいえ三成がマヌケな悪役にされてたらいやだなあ」だったり、なんかやたらCM投下してたりカヴァーイラストにオノ・ナツメさん持ってきたり「20万部突破!!」だったり、「小学館、宣伝費かけてますわあ」だったりするので、出した手がちょっと途中で止まってたところ、著者さんに関わるお仕事がきたので「んじゃ、参考資料つうことで」と購入、がつがつ読んでしまいました 『のぼうの城』。 こりゃ売れるわ。 素直におもしろいですもん。 もともとは第29回城戸賞受賞のシナリオ作品『忍ぶの城』。それを著者自らノベライズしたものが本作です。 長年シナリオを書いてきたひとが書いてるなあ、というところが随所にうかがえます。 キャラクターの設定のしかたが非常にわかりやすい。顔かたち、体型、衣装、言葉遣い、そういったものの描写、差別化がちょっとうるさいくらい詳細で、だから映像としての「そのひと」がやすやすと目に浮かぶ。 (「俺様の想像力」に多少の自信のある向きは、そこんとこが逆に鬱陶しいと感じるかも知れません。説明しすぎ、っていう) 「このひとはこういうひとだから、こういうふうに考えて、こういうふうに感じて、こういうふうに行動するだろう」 というところにぶれが無い。 いいひとも悪いひとも、お侍もお百姓も、普通のひとも普通じゃないひとも、スマートなひともマヌケなひとも、いるべきところにいるべきひとがこれ以上無いコンディションで控えていて、言うべき台詞をきっちり吐いて、良い仕事をしています、という感じです。 だから、「うわぁ、そこそう来たかい!」と瞠目するような場面はあんまり無い。 青々しく微笑ましくかわいらしいところはあっても、破綻は無い。 なので、ちょっとあまりにもわかりやす過ぎアンド出来過ぎだわ、って感もあったりします。 ただ、そのようにわかりやすいところが、「歴史小説なのに20万部超」の理由なんだろうとも思います。全然悪くありません。 そんな、いたってわかりやすい物語のなかで唯一非常にわかりにくいのが、主人公「のぼう様」こと成田長親。 最初から最後までほとんど為す術も無く、為す術も無いままちゃんとヒーローであるという、非常に不思議なひとです。 色目のくっきりしたわかりやすい物語のただなかにひとり、色目のはっきりしない、安気でもあり不穏でもあるような、嵐の前の雲のような、不可解な人物がぽつんといる。 「愛すべき愚か者」であると同時に「狂気を孕んだ扇動者」でもあるような人物が。 そういうのぼう様の不気味さは恰も、忍城をひたひたと取り囲む泥田のようです。 忍城攻防戦の第一戦。 数で押せば勝てると侮っていた豊臣方は、惨憺たる敗北を喫します。 深田に足を取られて転んだ兵を踏みつけて逃げ、転んだ兵につまずいて倒れた兵を、さらに別の兵が踏み板にして逃走した。しまいには、前の者が転べば足場になると、わざと味方を転ばせて逃げる者さえあらわれた。この敗軍の中で最も多かった死因が、「田圃での溺死」だったという。 あたら戦国時代に勇壮に城攻めして、挙げ句「味方に踏まれて田圃で溺死」はいやだよなあ、と思います。 べったりとひとを呑み込んで窒息死せしめる泥田。同時にそれは「米」という、生命を養う糧を生み出す場でもあります。 のぼう様は下手くそなくせに、百姓の田植えだの麦踏みだのを手伝ったり、田楽踊を踊ったりするのがすきです。 三成の水攻めで百姓たちが丹精した田圃を台無しにされたとき、 「わしは悪人になる」 の一言と共にのぼう様が、でくのぼうの仮面の下の不気味さを全開にする場面は、どっかこう、人ならぬ巨大なものの意志を負って立つ、或いは立たされる、みたいな印象がありました。 本作は城戸賞受賞後、犬童一心監督で映画化の企画が進んでると聞きますが、非常に気になるのはこののぼう様を誰が演じるか、ってとこです。 正木丹波も酒巻靭負も柴崎和泉も甲斐姫も、石田三成も大谷吉継も長束正家も、わりかしキャスティングは楽に出来そうですが、肝心ののぼう様ってじゃあ誰が演るのか? それ次第で、映画の出来は、うまくもまずくもなるんじゃないかと。 私は、個人的にですが、古田新太さんをイメージしつつ、小説を読みました。 そうだった。 肝心の三成ですが。 「マヌケな悪役」ではなくて、ちゃんとかっこよく、人間臭く描いてくれていて、嬉しかったです。 (「マヌケな悪役」担当はむしろ長束正家でした) 三成の良いところもだめなところもちゃんと見て、そのうえでなお、 「好漢(いいおとこ)だ」 とおもい、 「数多い敵からこの男を守ってやらねばならぬ」 と密かに心に誓っている大谷刑部。 「そんなふうに言ってくださって、ほんとうにほんとうにありがとうございます」 と、風呂んなかで読んでてちょっと涙が出ました。 著者さんに関わるお仕事を納品したあと、担当編集者氏にメールで、 「私、じつは石田三成と大谷刑部のファンなんです」 とうちあけたところ、 「人生ではじめて『石田三成のファン』という方を知りました。いわんや大谷刑部をや」 とお返事がありました。 そういう人生もある、という事がわかって、ある意味メカラウロコな次第です。
by red_95_virgo
| 2008-08-15 11:11
| book
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Comments(4)
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カタリーナ
at 2008-08-15 12:18
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同じ忍城攻めを扱った作品を例の風野真知雄さんが「水の城 いまだ落城せず」として書いておられ、どちらを先に読むか考えているうちに、「のぼう」の図書館予約数がとんでもないことになってしまいました。
軽く1年は待たされるだろうという数なので、どうしようかなあと思っていたらこちらにレビューが。 三成の描き方に関しては、あちこち見ていると賛否半々というように感じましたが、レッドさんがOKを出されているのでOKなんだなと(笑)安堵した次第です。 成田長親に古田新太さんとは思いもよらぬキャスティング! もちろん本作を読んでいないのですが、文字が脳内で映像変換されない私にとっては指針となるキャスティング案です。 映画化のほうも楽しみですね。
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red_95_virgo at 2008-08-16 08:11
>カタリーナさん
『われ、謙信なりせば』と『不識庵謙信の影』の感想を先にアップしようと思ってたんですが、ついついこっちが先になっちゃいました。 風野さんのその作品も、『のぼう』を買ったあとに知りまして、次はそっちに手を出す予定です。 『のぼう』ですが、歴史小説である以前にエンターテインメントではないかと。それは作者和田さんの資質なんですが、いわゆる歴史ファンの方が読むとそこが逆に若干食い足りなかったり、「重厚じゃない」と感じたりするかも知れません。文体なんか、司馬遼太郎の影響が色濃いし(笑)。 三成に関しては、純粋で熱いハートを持っていつつも、自分の美意識でがんじがらめになっている事に気づかず、ひとに嫌われるような言動に走ってしまう無器用さ、ツンデレ感が、これまたわかりやすく描かれていて、自分は良いなあと感じました。 加藤虎ノ介さんにぜひとも演じて欲しいものよなあ、と改めて(笑)。 図書館の予約数が膨大なんでしたら、よろしければ私のをレンタルいたします。お申し付けくださいませ。
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ヨモ
at 2010-04-17 13:26
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ごく最近「のぼうの城」を読みまして。
レッドさんも読んでおられたのが嬉しくて今更ですがコメントいたします。 某戦国ゲームにはまったり大河を見たりはしても 戦国時代についての知識は教科書程度だったので、 読後は目からウロコでした。 戦国期の新たな魅力を教えてくれた本です。 その読みやすさ・分かりやすさは理解力の乏しい私には とてもありがたかった^^; 石田三成について「戦下手」という情報が欠落していた私ですが、 落日に向かう豊臣家に忠義を尽くした彼の在り方に 以前から魅力を感じておりました。 三成と吉継の関係が理想的な夫婦の様に感じられたのは 私だけでしょうか・・・あ、野球のバッテリーみたいか。 和田氏の文章の痒い所に手が届く感にハマって 「忍びの国」「小太郎の左腕」と続けて読みましたが いずれも戦国期の話で、題材が司馬遼っぽいのも好みでした。 昔「風神の門」を読んだときはそれほど読みやすいと 思わなかったので、 比較のために「関が原」を読んでみようと思いました。 ちなみに愛息(1歳)の名前は「 み つ な り 」を の4文字を並び換えてつけました、親バカです。
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red_95_virgo at 2010-04-18 21:07
>ヨモさん
私、大河ドラマ『黄金の日日』で近藤正臣さんの石田三成にはまりまして。 そのあと司馬さんの『関ヶ原』で二度惚れしまして。 山南忌の翌日は大徳寺へ行き、久し振りに三成の墓所・三玄院の門前で手を合わせてまいりました(残念ながらこちら様は拝観謝絶)。 三成については「利口馬鹿」だなあと思うところも多々あるのですが、やっぱり自分からすると愛すべきひとだし、 >三成と吉継の関係が理想的な夫婦の様 はい、もうこれがかなりたまんないんですよねー(笑)。 その点、三成以上に男前な吉継にほれてまう『関ヶ原』、ぜひぜひご一読くださいませ! このふたりにフォーカスした映画とかドラマとか誰か作ってくれないものかと長年渇望しているのですが、大河ですらなにかとスルーされがちな大谷吉継ですから、難しいのかもしれません。 (『天地人』では津田寛治さんが演ってくださったので、ひっそり嬉しうございました) そんなふたりがフィーチャーされる『のぼうの城』、映画化が楽しみです。いよいよ今年の夏からクランクインのようで、キャストが気になるところでございます。
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