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2011年 11月 17日
空色の前掛けにこびりついたうろこが白く光る。
毛玉のついた臙脂のとっくり化繊のズボン、つっかけばきで濡れたコンクリを踏みしめあるく。 前掛けのポケットには小出刃。さっきまでおろしていた小魚の血で汚れていた。それだけではこころもとなくて途中で手鉤をひろった。なまぐさい柄を握りしめ二度三度振って手応えをたしかめる。 市場のどんつきに無闇とでかい仲買の事務所がある。錆びた鉄骨と枯れた木材がそびえたつ。次の地震がきたらきっと崩れる崩れるといわれて崩れぬままに半世紀が経った。そこにジャンがいる。組合長の女に手を出して、それがばれて半殺しにされている。琥珀の色の眸のジャン、まつげの長い、色のしろい、細い顎した美しいジャンが、銀のかまぼこ指輪はめた左手の薬指を第二関節からへし折られて泣いている。 そういうことらしいからちょっと行ってやんなよいすゞさん。 旅の船頭がしらせてきて、そそくさと消えた。 持ち重りする手鉤ひきずってあるけば目の隅で切り取られた海が白黒だ。鳶が鳴いている。つっかけでなくズックはいてくればよかった。手鉤で何人やれるかな。空色の前掛けの上から腹をなでた。 お と う さ ん。 なにか約束みたいに。 声に出さずいってみた。風がびゅんと頬を薙いで過ぎる。おお厭だ。空模様が変わるまえに帰ろう。夕飯はふんぱつして寒鯥の煮付けにしようあのひとの好物だから。事務所へのぼる階段の下でつっかけをぬぐ。濡れたコンクリがテニスソックスの足裏にしみとおった。親指のところに穴がある。 帰ったら繕わなくちゃ、と彼女は思った。 After The Apples/KAZUYA YOSHII 01. 無音dB 02. Next Innovation 03. 母いすゞ 04. ダビデ 05. バスツアー 06. Born
by red_95_virgo
| 2011-11-17 02:16
| 吉井和哉
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Comments(12)
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シベリア728
at 2011-11-17 11:08
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寺山修司みたいですね。ちょっとドキドキしました。続きが知りたくなります。After The Applesは、アルバム全体が曇天、みたいな感じがします。新境地というか新天地というか、まだ味わい切れていません。
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パブロ・あいまーる
at 2011-11-17 20:26
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うち地元の魚市場、見たことあるの!?
って思うような描写に、驚いたよぉ! すごいっす(T∇T) あの日、事務所もなくなったけど、 コレ読んで、チョウ目に浮かんだよ;; 懐かしいというには、まだ、8ヶ月だけど…。 ジャンってば、いつもいすずさんを困らしてるんだろね、 パパになるってのに、ダメじゃん(笑)←ジャンだけに?←バカ^^;
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ローズ
at 2011-11-18 00:22
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なんという完成度。ありありと映像が浮かび上がる短編小説のような文章です。すごい。
決して長くはない”母いすゞ”という曲が孕んだ物語性のなせる業か。こんな曲いままで聴いたこともない。私は今日は頭ぐるぐるして、一日使い物にならない人でした。 大きいのや些細なのや、何と戦わなきゃならんのかはその時になってみなきゃわからないのだが、また今日も魚さばいたり繕いものしたり戦ったりする日常を乗り越えていく。とっとと片をつけなけりゃ。今日が終わってしまう前に。そうやって生きていくうち、母という生き物は強くなるのか。 ダメだ、まともに文章も書けない。私はほんと使い物になってない(笑)。こんなんでも強くなれるのか?
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red_95_virgo at 2011-11-18 09:00
>シベリア728さん
“母いすゞ”のイントロ聴いていて浮かんだ景色を整理して、いわゆるSS的なものを殴り書いてみました。 が。 「寺山修司」だなんてもう、穴があったら入りたい……。 とはいえ“母いすゞ”の(吉井本人がインタヴューで云っているところによる)「東北の港町」というのは、青森出身の寺山氏の世界観にも通じるのかな、と。そして私自身もまた、伊豆の港町の生まれですのでかなりリアルに身に迫る歌でもありました。 『After The Apples』の世界はそもそも吉井和哉のなかにあったものだと思いますが、1994年当時には持ってなかった筋肉と手業を獲得したいまだからこういうふうに出してみたぜオラ聴け!みたいなもんかなと思ってます。 人間は変わる。 そして人間の変容を音楽は待っていてくれるんだ。 いつものことですが、今回もやはり、そんなふうに思います。
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red_95_virgo at 2011-11-18 09:13
>パブロ・あいまーるさん
やっぱり「港町」ってどっかしら似るのかしら(笑)。 うちの地元の港町の、私が小さい頃にあった魚市場と仲買(もう壊されてしまった)をイメージして書きました。 母方の本家が海賊上がり(推定)の網元で、いまは漁業会社を営んでいるので、私も荒っぽく生臭い環境で育ちました。 “母いすゞ”、もしかして「なんじゃこりゃ?」なかたもいるかも知れないが、毎日海を見て、海のすぐそばで育った自分にとっては、原風景がもりもり立ち上がってくるような歌なんです。 >パパになるってのに そうなんですよ(笑)。 でもジャンはまだ知らないんですよ。顔はキレイだけどバカだからジャン。 このときいすゞさんの腹にいるのが、いまは部屋が物置になってる長男です。 そして仲買の組合長はいすゞさんの幼馴染みでいすゞさんに岡惚れです。 ああお話がどんどんできてこまる……。
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red_95_virgo at 2011-11-18 09:26
>ローズさん
すいませんお目汚しで……。 「なんという完成度」というならばやはり“母いすゞ”という楽曲、というか詩世界でしょう。 「未来」というものへのおののきと、おののきに揺らぎながらも腹を据えて生きている「現在」の生臭さを、たったこれだけの詩で描き尽くしてしまった。 私はずーっと吉井和哉を「詩人」だと思ってきましたが、ソロになってからは毎作言葉に磨きがかかってきていて、ほんとうに凄まじい。どこまで行くのかこの男は。2冊目の詩集、ぜひぜひロッキング・オンから出してくれ(笑)。 でも、自分にこんなSS書かせたのは、歌詞というよりあのイントロです。 ♪チャーンチャラッチャッチャン!てやつです。 すごくありがちで懐かしい。そしてざわざわと血が騒ぐ。なのでこの楽曲は自分のなかでは東北の港町で繰り広げられる西部劇です。どっちも切った張ったの血生臭い環境だから、なんの齟齬も無く重なる(笑)。
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もといぬ
at 2011-11-28 14:29
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おお厭だ(大楠道代) おお厭だ(北原ミレイ) おお厭だ(江波杏子) おお厭だ(佐藤友美) おお厭だ(伊佐山ひろ子) おお厭だ(ジーナ・ローランズ) おお厭だ(ドミニク・サンダ) おお厭だ(シャーロット・ランプリング) おお厭だ(アリダ・バリ).....
ごめんなさい。素敵すぎて勝手に広がってしまうんです。お邪魔しました。
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red_95_virgo at 2011-11-28 21:12
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at 2011-12-03 00:10
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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red_95_virgo at 2011-12-04 22:12
>[2011年12月3日0時10分]さま
きゃーこちらこそご無沙汰しております! ご感想ありがとうございます。 港町って、海に向かって開けた場所であると同時に、「流れ着く」場所でもあって、行くも行かぬもそのひと次第というか、自由と不自由が鬩ぎ合っているようなところなんですよね。 私も生まれ育ちが港町で、いまも「横浜」という港町に腰を落ち着けているあたり、やはりなにか離れ難い魔力があるようです、「港町」には。 そして原田さん情報もありがとうございます。いえいえなにも知りませんでした。あああ『竜馬暗殺』もやっているんだわでももう仕事でむりぽ……。『鬼火』だったら行けるかなあ。北村さんの旧芸名時代の作品をスクリーンで拝めるのはたいへん貴重な機会なので、がんばって行きたいです。
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take-crow at 2011-12-06 12:27
大変ご無沙汰いたしております。カメなコメントで申し訳ありません。
リアルなこと、脈絡のないこと、様々な記憶を引きずり出されるような気がしました。この『母いすゞ』という曲を聴いて。 相変わらず一所に澱んで身動きもとれない自分にはその強さが寧ろ痛くもあり。 そうしてものされたこの小品もただ見事という他なく。 圧倒的に迫ってくるあのリフを繰り返し効いているうちに、 鬱勃とした頭の中でなぜか『すきすきアッコちゃん』という曲を連想してしまいました。 むろんふざけているわけではなく、 ああ、思えばその曲は「来ぬ人を待つ」歌だったのだなあと。
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red_95_virgo at 2011-12-08 01:06
>take-crowさま
「すきすきアッコちゃん」の歌詞うろ覚えなので検索してみました。 「アッコちゃんすきすき」ですね、正しくは。井上ひさし作詞とは知りませんでした。アッコちゃんのかわりに納豆売りと校長先生と大どろぼうが用も無いのにやってくるという、不思議な運命の歌だったのですね。 どうして、なんのためにアッコちゃんを待っているのか。 そもそも「待っている」のは誰なのか。 ひとつもわからないまま終わってしまうという。 まあタイトルからして『ひみつ』なのだものなあ。
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