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2009年 09月 01日
「起きて食って寝る」の美しく端正な描写というものに生来弱い体質で。
とりわけそれが、「同性同士が起居を共にする物語」だったりしますと、はしたないほどガツガツ食いついてしまいます。 そんなわけなのでこの映画も、公開前から、じつはひっそりガツガツ食いついていた。『ジャージの二人』ぶりに劇場で観る堺雅人さん主演作、『南極料理人』。 自分の場合、「あーあーここでこんなつまんねえことさえやんなきゃなあ……」とか、「あーあー大っ嫌いなこいつさえ出てなかったらなあ……」とか、なかなか「ああおもしろかった」への到達は難しいものですが、『南極料理人』はまったくそういうことがなかった。 沖田修一という監督の作品を拝見するのはこれがはじめてですが、すごくリズム感の良いかただなと思った。演出にしろ台詞にしろ、映画を支配するリズムがいちいちすべて気持ちよい。役者が悉くうまい(とりわけ豊原功補さんのうまさときたら)。つまりひとつも嫌いなところが無い。なにかこう、ものすごい力をもらったとか、一生ものの宝石とか、出逢うべくして出逢ったとか、そういう大上段なもんではないのですが。 舞台は南極という極地のなかでもさらなる極地。富士山ほどもある標高の、ペンギンはおろかウイルスさえも生存できないマイナス50度の「この世ならぬ世界」。劇中、 「一緒に脱走しない?」 「死んじゃいますよ」 みたいな会話があったが、「出たら最後」のそのよりどころが、観測隊員さんたちの暮らす「ドームふじ基地」。 T.E.ロレンスは砂漠が好きな理由を「清潔だから」と言った。 『アラビアのロレンス』という映画の大半を覆い尽くす清潔な砂漠はその裏に、清潔という「美と快適」がそのまま生物の不在(=死)に繋がる容赦の無さをも備えていた。そしてその容赦の無さは、『南極料理人』の底にもひたひたとある。 ドームふじ基地という極地に建つ「ちいさな家」の描写をほんわかしながらみていると、 「なんか、南極も良いじゃん」 とかうっかり思ってしまう。 しかし、「出たら最後」がもたらす閉塞というのはやはり半端なものでは無い。 ドームふじ基地という「ちいさな家」によってかろうじて守られているひとびとも、日を数えるにつれてわずかずつ、「この世ならぬ世界」の異常に蝕まれていく。そのうちむかしそこで非業の死を遂げた観測隊員の霊が誰かにとり憑いて血みどろの暗黒殺戮劇が、とかだとスティーヴン・キングになってしまうんですが、『南極料理人』は勿論そういうキングな事態にはならない。 というか、そういう事態になってしまってもまったく不思議は無かったのを寸でのところで食い止めていたのが、「メシをつくるひと」西村淳さん(堺雅人)ではなかったか。 プロの料理人役じゃないからこそ。 普通の中年男としてメシをつくる場面の堺雅人は、かつて無いほど佳かった。 さしみを切る手つきも。 照り焼きに注ぐまなざしも。 とりわけ、堺さん自身が「ぜひ観てください」というおむすびの場面。 『間宮兄弟』で佐々木蔵之介がつくるおむすびと、『南極料理人』で堺雅人がつくるおむすび。 どっちか食わせてやるといわれたらどっちなんだううむ、とか迫られてもいない二択で迷う。 南極暮らしが長くなるにつれ、西村さんはどんどん「お母さん」と化していく。 淡々とメシをつくりながら「お母さん」に変容していく堺雅人は、かつて無いほどえろかった。 なにかいけないものを見せられているような羞恥を、『南極料理人』の堺さんは、私に強要するのだった。 はじまりのころはそれなりにこざっぱりとしていた髪がだらしなく伸びてゆく。 運動不足で贅肉のついた腹をたっぷりと突き出し、髭をはやして割烹着(異常に似合う)をまとい、雪焼けした顔でほにゃっと笑うと、口許から覗く歯がちょっと黄ばんでいたりする。 勿論南極にも風呂設備はあるので決して不潔なわけではないのだが、堺雅人そのひとが毛穴の奥から発する体臭に鼻孔を打たれるような、なまなましい錯覚をおぼえる。 それらがなにもかも、たまんなくえろい。 結局、人を生かす「メシ」というものを司るひとゆえの生命力(エロス)なんだと思う。 一口に観測隊員さんといっても、いろいろなひとがいて。 難しい学問をしたり、いろいろな仕事に就いていたり、家族が崩壊寸前だったり、なんだかんだあって南極に集って、そこでひとりひとりがひとりひとりの役割を果たしながら、「ちいさな家」のなかで生きている。 気象学とか雪氷学のエキスパートにくらべたら、「メシをつくるひと」というのはいて当たり前過ぎて、朝昼晩こなす8人分のメシの支度も、そのハードさをあんまり思い遣ってもらえない。 西村さんという「お母さん」はしかし、黙々とメシをつくることによって、閉塞がもたらす危機から家族を救う。西村さんも一度は閉塞に負けそうになるのだけれど、やっぱりメシをつくりメシを食うことによって踏みとどまる。 家族のためでも他人のためでも自分のためでも。 自分の頭と自分の手を使って日々のメシをつくり、食わして、食って、生きている。それをしているひとがこの映画を観ると、すこし嬉しくなるんじゃないかと思うよ。 当たり前過ぎるその繰り返しがじつはちっとも当たり前じゃない。超然とかっこよくて、とてもエロティックなことなんだ、と気づくんじゃないかと思う。 お父さん。 お母さん。 おじいちゃん。 長男。 二男。 放蕩者の叔父さん。 無駄飯ぐらいの居候。 「ドームふじ基地」という「ちいさな家」が見せるホームドラマの様相は、勿論、「この世ならぬ世界」がみせたつかのまのまぼろしに過ぎない。 決められた日数を過ごしてしまえば隊員たちは日本に帰る。 それぞれの、ほんとうの家族のもとへ。 まぼろしは、食卓の上からきれいさっぱり拭いとられて、誰もいなくなった「ちいさな家」だけが、雪と氷のなかに残る。 純白の南極にほんのちょっとのさみしさを刷いて、佳い読後感を残す映画でした。 そんな私の今朝のあさめし。
by red_95_virgo
| 2009-09-01 20:02
| movie
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Comments(6)
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さな
at 2009-09-02 11:17
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redさん、こんにちは~。
南極料理人ご覧になったのですね♪ redさんの感想を読んで益々見たくなりました。 わたし見るのは、もう少し先の予定ですが、非常に楽しみです。 そして、redさんの朝ごはんが美味しそうですー。 食は大事ですよねっ。 あ、余談ですがいよいよ明日、狭き門をくぐって来ます~。
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hayama
at 2009-09-02 13:34
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「僕の手はおにぎりを作るのに適している」と自画自賛したその手を見に私も参ります。
今からよだれが止まりません。
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red_95_virgo at 2009-09-02 19:39
>さなさん
おお、『狭き門』いよいよ明日ですかー。 ご覧になったかたのあいだでも、これまでのTeam申作品のなかでも一番良いとの評判なので、どうぞ楽しんでらしてくださいね。 そして『南極料理人』。期待を遥かに超える良さでした。入れ替え制の劇場じゃなかったら、もう一回リピートしてたと思います。そしてこの映画は、腹をへらして観に行きますとかなりの羞恥プレイが楽しめます! 私は太極拳の練習のあと、ぺこちゃん状態で鑑賞したんですが、途中で腹が鳴ってこまりました(笑)。 (ちなみに自分のあさめし、ライ麦パンとねぎと納豆のオムレツです。十年一日の如き定番です。)
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red_95_virgo at 2009-09-02 19:44
>hayamaさん
毎度毎度うんざりするほど吉井和哉を引き合いに出してすみませんが(病んでいますので)。 「寒い朝にこっそり おにぎり握るように愛してくれない?」 というフレーズが“I WANT YOU I NEED YOU”という楽曲に出てくるんですが。 正しくこれを地で行くまちゃとの手でした。 「それは……なにを握っているの堺さん!?」みたいな。 あれをぜひ山南さんスタイルでみとうございました。あねさん被りにたすき掛けで。うわーん。5年目のXデーも過ぎちゃったね……。
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アキタヒロコ
at 2009-09-09 15:24
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そんなにイイんですか!?私の生活圏での公開はいつの亊やらなのですが、きっと見ようと持久戦の決意を新たにしました(鈍獣だって7月だったんです)。そそられる解説感想をありがとうございました!
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red_95_virgo at 2009-09-09 22:59
>アキタヒロコさん
そんなにイイんですっっ!!!(笑) 開巻15分くらいで早くも、 「あ、こりゃDVD買うわ」 と思ったくらいイイです。 南極という場所がまずこのうえなく映画的で。 しかもそんな極限でも、ありがちな「ハードで男臭い」ドラマには仕立てず、敢えてお母さんみたいな料理担当を主人公に据えて、「食う=生きる」という視点からドラマを創り上げたセンスは素晴らしいと思いました。 ぜひ劇場で見ていただきたいです。 お近くで公開される事をお祈り申し上げます。
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