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2006年 04月 28日
よほど「読みたい」と思わない限り、本は図書館で借りるか、古書店で買うかの二択しかない貧乏人が(だから売れてる本を旬な時期に読む事はほとんど無い)、しかも最近の小説はほぼ読まない私が、1600円(税別)をやすやすと払ってしまったのが恩田陸の『チョコレートコスモス』。 恩田陸さんの作品は、これまでに数作しか読んだ事が無い。 『六番目の小夜子』、『球形の季節』、『不安な童話』、『麦の海に沈む果実』、そして『黄昏の百合の骨』。 読んでいる間は異常に惹き付けられ、それこそ読み終わるまで就寝できないくらい。そのくせ、読み終わると同時にすべて忘れてしまうというのはいったいどうしてなんだろう。 神秘的な美少女や美しい青年といった、自分の好みに非常に適ったキャラクターも多々登場するのに、読んでいる間はそれなりに彼らに感情移入もしているというのに、物語が終わった瞬間、すべてが「無」になる。名前すら、覚えていない。 たとえば、小野不由美さんの『十二国記』シリーズに対してのような、作家が創造する世界観そのものへの興味と執着が、恩田さんに関してはまるで無い。 たとえば、北村薫さんなどはその作風にちょっと反発しながらも(どうしようもなく鼻につくところがある)、「すごい」としか言いようの無いものをすらりと見せられ、悔しさ半分でそこに溺れる(ちょっとマゾヒスティックな)快感が癖になるけど、恩田さんにはそれも無い。 だから、自分が恩田陸という人の小説を「好き」なのかどうかも、ちょっとよく解らないのです。 『チョコレートコスモス』は、書評その他で 「恩田版『ガラスの仮面』」 とも呼ばれている、そんな物語です。 美内すずえが生み出した『ガラスの仮面』という少女マンガの怪物があります。 これをまったく知らないという人、今の日本にはたしてどれほどいるのでしょうか。知らなかったらぜひ読んで欲しいですが、大雑把に言えば、 「本能型の天才(北島マヤ)と努力型の天才(姫川亜弓)、ふたりの天才女優による、演劇界を舞台にした壮絶なラブストーリー」 というような物語です。 1976年、雑誌『花とゆめ』で連載開始(ちなみに当時、『アストロ球団』も少年ジャンプ誌上で絶賛連載中でした)、今年で誕生30周年を迎える『ガラスの仮面』。 もちろん私は連載の初回をリアルタイムで読んでいますし、コミックスも42巻全巻持っています。 最近では、自分が生きているうちに『ガラスの仮面』が完結する事は無いのかも知れないなあ、という静かな諦念をすら、感じております。 そんなにも長大な『ガラスの仮面』の中で、心の底から「面白い!」と感じる事ができるのは、舞台そのもののシーンよりもむしろ、舞台をつくるための「オーディション」の過程です。 マヤと亜弓がオーディションまでの間に味わう「経験」、その経験を通じて得る「感情」と「感覚」、それらを演技に転化するために必要な「修練」。 そのほとんどが血だの汗だの涙だの絶望だのに彩られてけれんたっぷりに展開し、やがてそうしたすべてがオーディションの場で審査員という観客の前にさらされ、彼らを畏怖と驚愕のどん底に叩き込む。 読み手はこの圧倒的な麻薬的快感に身を委ね、そして一度味わったその記憶は、容易に忘れる事ができません。 だから私たちは、何年待たされても、『ガラスの仮面』を諦められないのだろうと思います。 『チョコレートコスモス』の面白さは、まさにこうした「オーディションを見守る快感」にあるように思いました。 北島マヤにあたるのは、佐々木飛鳥。 姫川亜弓にあたるのは、東響子。 飛鳥ははかりしれない天才を秘めながらも実際の演技経験はほとんど無い、容姿もぱっとしない少女。一度聞いた台詞は即座に暗記し、一度見た演技は即座に、寸分違わず再現してしまう、「自意識の無い演技マシーン」という設定はまさに北島マヤ。 響子は、芸能一家に生まれ、幼い頃から舞台に立ち、女優としての将来を嘱望されているサラブレッドでありながら、自分の役者としての才能に密かに焦燥と不安も感じている。天分への自負と迷い、強さと弱さ、どちらもたいへん魅力的に見せてくれる人間臭い美少女。 (私はちょっと、東響子に松たか子さんをイメージして読みました) 『ガラスの仮面』では、マヤと亜弓が出会い、お互いの才能を意識して、そこから物語が大きく動き出しますが、『チョコレートコスモス』は、飛鳥と響子が出会ったところで物語が終わってしまう。 「その先」を明らかに感じさせながら、「その先」を(たぶん、敢えて)描かない。 狡いなあと思いますが、『紅天女』というものを 「描かなければ物語が終われない」 と思うあまりに美内すずえが陥ってしまった『ガラスの仮面』の迷宮を思えば、恩田陸が『チョコレートコスモス』で取った手は、いやらしいほど巧いと言わざるを得ません(続編が出なければ、の話ですが)。 「あそこに何かがあると思うんです。見たことないけど、何か凄いものがあそこにあって、それを見るためには、あそこの上に立つしかない。そう思って、ここに来ちゃったんです」 オーディション終盤で飛鳥と響子が踏み込んでしまう世界(飛鳥の言葉を借りれば「舞台の上の、暗がりの向こう」)におけるふたりの描写を読むと、恩田陸は『ガラスの仮面』をこんなふうに読んでいるんだな、という事がとてもよく解ります。 同時に、舞台という場所、芝居というもの、役者という人種に魅せられ憧れながらも、おそらくは永遠に「あそこ」には辿り着けない、永遠に客席に座り続けるしかない自分というものもまた、しみじみと思い知らされてしまいます。 おもしろいです、これは。 『ガラスの仮面』を諦めきれないご同輩には、特におすすめ(笑)。
by red_95_virgo
| 2006-04-28 22:59
| book
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Comments(10)
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tonami
at 2006-04-29 01:23
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これは「ガラスの仮面」を諦めきれない私は読まなくてはいけません!読みたいです!
「ガラスの仮面」持ってますよ、単行本42巻。私が「ガラスの仮面」と出会ったのは高校生の時に在籍していた演劇部の部室でした。アクセント辞典の隣りに単行本が並んでいました(笑) 練習をさぼって読んだんですが翌日にはお小遣いつぎ込んで当時出ていた分を全部買い揃えちゃってました。まさか、こんな長い付き合いになるとは…。勉強不足で恩田さんのことは存じてなかったので、紹介してくれてありがとう!って感じです。楽しみだな~。 ちなみに私が最近読んだ本は図書館で借りた「スイッチを押すとき」だったりします。わかりやすくてスミマセン(笑)
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YOSINO
at 2006-04-29 10:27
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レッドさま。とても興味がわきました。恩田氏は興味ある作家ですので、早速探して読んでみようと思います。かくいう私も、ガラスの仮面リアル読者世代です。本当に生きてるうちに(笑)完結して欲しいものです。
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red_95_virgo at 2006-04-29 12:24
>tonamiさん
演劇をやってらした方、演劇のお好きな方でしたら、『チョコレートコスモス』はとても楽しめる小説だと思います。『ガラスの仮面』をまったく知らなくても勿論おもしろいんですけど、知っていればニヤリな箇所がいろいろとございますので(笑)。 踏襲とかパクリというよりも、すごく的確な『ガラスの仮面』批評だなあと感じました。 ところで『スイッチを押すとき』。 私も読んだんですけど、えー……あんまりコメントしたくなーい(苦笑)。 テレビ誌のドラマストーリー、あるいはシナリオのプロットだけを延々と読まされてるような。どうひっくり返っても「小説」ではないですよね。 しかし読後の印象が最悪だったので、逆に舞台への期待は高まりました(笑)。
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red_95_virgo at 2006-04-29 12:38
>YOSINOさん
恩田陸さんは1964年生まれだそうですから、正しく『ガラスの仮面』どっぷり世代。彼女の他の作品から受ける印象も、乱暴に言えば「少女マンガ」です。 実際、萩尾望都、吉田秋生といった作家の作品へのオマージュを作者自ら公言していますし、そのあたりが24年組影響下にある世代の私なんかが惹かれる所以かな、と。 ホラー風味がかなり強いところも、恩田さんの特徴でしょうか。『ガラスの仮面』には美内さん特有のちょっとホラーな描写がときどき出てきますが、『チョコレートコスモス』にも、かなり「ぞっ」とさせられるシーンがあったりします。 500ページ超える作品ですが、わくわくドキドキしながらあっという間に読めちゃいますので、ぜひご一読ください。
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tomopon
at 2006-04-29 23:49
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「ガラスの仮面」懐かしいです。あまりの壮大さに、追うことをためらってしまった口ですが・・・というか恩田陸さん・・・同い年(爆)。
「スイッチを押すとき」、私が感じたモヤモヤをredさんの言葉が表してくれました。 今、読んでいるものがないので、「チョコレートコスモス」トライしようかしら。
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red_95_virgo at 2006-04-30 11:50
>tomoponさん
『ガラスの仮面』、数年ぶりに42巻が発売された時は、それすら「奇跡か?」と思いました。 もはやこれは「物語を楽しむ」という次元ではなくなっているように思います。美内先生は、お話は最後まで出来ていると語っておられましたが、とにかく先生がご存命のうちに終わって欲しい、願いはそれだけです(笑)。 私は『ガラスの仮面』が最も面白かったのは劇中劇『ふたりの王女』の頃までだと思うのですが、『チョコレートコスモス』は、そういう荒っぽい情熱のようなものを久々に思い出させてくれる秀作でした。山田悠介にモヤモヤさせられたのであればなおのこと、スッキリされるかと思います(笑)。
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さな
at 2006-05-01 12:14
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redさん、こんにちは! 「チョコレートコスモス」ぜひ読んでみたくなりました!もちろん「ガラスの仮面」を夢中になって読んでいた一人です。最後が気になって仕方ないです。
連載も読んでましたが休載が多くて、まとまってドカンと読みたいと常に思ってました。 演劇部にも在籍してました。今も、お芝居や公演を見るのも好きですが、演る事にもついつい興味がいってしまいます。さっそく図書館へ行ってこようと思います~。 ちなみに「スイッチを押すとき」は昨日、借りてきました。今朝から読んでます。
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red_95_virgo at 2006-05-01 15:48
>さなさん
『ガラスの仮面』、私ももともと連載で読んでいたのですが、途中でコミックスを大人買いしてからはずーっとコミックスだけ買ってます。15巻ぐらいまでをまとめ買いして、休みの間読みふけった時の快感が忘れられません(笑)。 私は、学芸会以外で「演じた」経験は無いんですが、合唱や落語や長唄などで「舞台に上がる」事は子供の頃から続けていまして、やはり見るにしても演るにしても、「舞台」という場に棲んでいるなにかにずーっと魅了されているんだなあ、と感じます。 『チョコレートコスモス』、3月に発売されたばかりで、恩田さん人気作家ですし、もしかすると図書館で予約待ちかもしれませんが、ぜひお読みになってみてください。
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かわうそ
at 2006-06-11 05:30
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レッドさんの記事を読んですぐに図書館で予約した順番がやっとまわってきました。
もう、一気読み。 これ、続きが出ますよねえ。 飛鳥が『冷静に分析し、正確に再現する。その事がじきに壁になって苦しむ。』とあるのですが、まだその壁が立ちはだかってないですものね。 『チョコレートコスモス』どんな脚本になるのか?役柄は?演出は?二人の稽古風景は?舞台での演技は?観客、劇評家の反応は? 続きが読みたいです。 これを読んだら余計に姫川亜弓さんのひたむきさに泣けてきました。 マヤはかわいそうな境遇だけど、応援し、協力してくれる人が沢山いる。 亜弓さんは、周りから出来て当たり前と思われて、(親からも、です。響子の父親は娘を理解して、先輩として、父親として、いい方に導いていってくれるのに)でも、もっと高いところへ努力していることを読者しか知らない。 あっ、月影先生だけは知っている。 『ガラスの仮面』私も生きているうちに最終回読みたいです。
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red_95_virgo at 2006-06-11 11:03
>かわうそさん
無事借りられて良かったですね。 私、ただいま『チョコレートコスモス』は行きつけの美容院の女の子に貸し出し中です(代わりに『ブレイブ・ストーリー』借りて読んでます)。 私も『ガラスの仮面』に関しては根っからの亜弓さんシンパです。 「出来て当たり前」と思われ、それがまたすらりと出来てしまう彼女。でも、「出来る」ようになるために費やした努力は決して表には曝さない。なに不自由無い環境で育った完全無欠の美少女という表の顔と、裏腹の脆さ、弱さ。 そして彼女が心底望むものは、おそらくは、決して彼女には与えられないもの。 ああ、たまりませんよね亜弓さん。不憫過ぎ。 やっぱり『チョコレートコスモス』、続編を期待してしまいますね。作者的にも構想はあるみたいですが。そのうちドラマ化とかされちゃうのかなあ……劇中劇『チョコレートコスモス』が『紅天女』になんない事を(笑)祈るばかりです。
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