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2006年 02月 20日
世界から少しはずれたところで暮らしているので、巷ではトリノオリンピックで大騒ぎだというのに、基本的にどこ吹く風だったりします。
そもそも寒いのが大嫌いだし冷え性なので、ニュース映像で雪や氷ばっかり見せられるところから既に辟易です。 とはいえこの時期、テレビはだいたいどこでもオリンピックネタ一色。仕事したりごはん食べたり本読んだりしながらテレビつけっぱなしにしてますが、 「ああ……飛んでるなあ……」 だとか、 「ああ……滑ってんなあ……」 「ああ……こすってんなあ……」(←カーリング) だとか、その程度の感動しかありません。 そんなオリンピック不感症の私が、一瞬だけ目を奪われた映像がありました。 フィギュアスケートのペア・ショートプログラムに於ける井上怜奈・ジョン・ボルドウィンペアの、スロートリプルアクセルでした。 なんとすごい事をする人たちかと思いました。 ぶん投げる側のボルドウィンさんも、宙に舞う側の怜奈さんも。 なぜこれが目に留まったかといえば、えー、彼らが明智兄弟を彷彿させたからという、たいへんねじ曲がった理由だったりもするんですが——それは怜奈さんが身長149センチと小柄なせいもあるんだが。 先程からNHKで『トリノオリンピック 前半ハイライト』という番組を観ていて、そこで初めて、井上怜奈さんが肺癌に冒され、再発の恐れを抱えつつなお滑っているという事を知った(本当に、今更そんな基礎知識の段階ですみません)。 70年代の少女マンガ読みとして、どうしても、思い出してしまう作品があります。 それは「りぼん」1975年1月号に掲載された大矢ちきの『雪割草』。 主人公のプリシラ・ジルは恋人マイロン・ジュールとペアを組んでいるフィギュアスケート選手。再生不良性貧血に冒され、これ以上スケートを続ければ余命3カ月足らずと宣告されたプリシラに、天才スケーターのレックス・グイドが手を差し伸べる。 プリシラの病を知って、彼女の身を案じ、「結婚しよう。ずっとそばにいて手を握っていてあげる」と言うマイロン。 けれどもプリシラは、マイロンではなくグイドの手を取る。滑るために。死の恐怖を抱えながら命を燃焼させるために。グイドと共に行く事、それがそのまま自分の死に繋がるという事を承知して。 グイドの視線が何を語っていたのか プリシラとグイドはワールドスケーティングコンペティションで凄まじい完成度のフリースケーティングを見せ、演技終了直後にプリシラは氷の上で倒れる。 観衆の上げる叫びの中、リンクを立ち去るグイドはしかし、倒れたプリシラを一顧だにしない。 一度たりとも振り返らない。 俺はもうすべらん グイドのこの一言だけが千金の重みを持って残され、物語は終わります。 1975年の「りぼん」という雑誌はこんなにも「大人」であったのだという、その見本のような見事な作品。 大矢ちきさんは『雪割草』に限らず「大人」な作品を描く作家でしたが、『雪割草』はとりわけて大人でした(ロッカールームでのレイプ未遂シーンも話題になった)。いわゆる難病ものであり、一つ間違うと甘く感傷的なストーリーに堕すところを作者の知性ゆえにそうはならず、苦く、厳しく、あたたかい人間ドラマになっていました。 プリシラとグイドの関係が男女の恋愛関係という生臭いものに易々と陥らないところもまた、すごく大人だった。 なにより大矢ちきさんの描く男は凄絶にかっこよくて、グイドの最後の台詞は 「俺はもう○○しない、金輪際な」 という応用の仕方を以て、読了直後から友人との間で流行したもんでした。 (少女マンガの中にしかいないだろうなあと思っていた、大矢さんゑがく、長身細身の、頬骨の美しい男たち。 1975年から遠く隔たった1990年代、たとえばすかんちのローリー寺西氏やイエロー・モンキーの吉井和哉氏によって私は、少女時代の夢が僅かなりとも叶えられた事を知るのです。) 井上怜奈さんの物語を追えばまさに「不死鳥」という形容が相応しい。 お父様と同じ難病を克服して——という一点だけ抜き出すと日本人好みのお話が出来上がってしまいそうだが、氷上を飛ぶ怜奈さんはそうしたバックグラウンドなど知らずとも、ただパートナーを信じて飛ぶその姿だけで十分、こんな私の目をも惹きつける強さ美しさを湛えていたのでした。 『雪割草』でプリシラが言う。 あたし「あなた」は、目の前のグイドのみを差すものではない。雪割草の花言葉は「信頼」。それこそが得難いものだというメッセージ。 しみじみと大人の物語であった事よなあと、30年経った今でも、読み返すたびにそう思います。 ★大矢ちきさんについての追記 大矢ちきさんは、その後「おおやちき」と改名されました。が、ここでは敢えてマンガ家としてご活躍されていた当時のお名前で表記しています。 現在では大矢さんの作品の入手は古書店などに頼らざるを得ず、私が持っている「おおやちき作品集」Ⅰ〜Ⅲ(集英社刊)も1990年刊行と比較的新しいのですが既に絶版です。収録作品は下記の通りです。 「おおやちき作品集Ⅰ キャンディとチョコボンボン」 天の神様のいうとおり(描き下ろし)/キャンディとチョコボンボン/王子さまがいっぱい/ひとめで恋におちたなら/アルフォンスお先にどうぞ/恋のシュガーワイン 「おおやちき作品集Ⅱ おじゃまさんリュリュ」 うそついたら針千本のーます(描き下ろし〕/おじゃまさんリュリュ/白いカーニバル 「おおやちき作品集Ⅲ 雪割草」 雪割草/ルージュはさいご/この娘に愛のおめぐみを/並木通りの乗合バス 名作といわれる『いまあじゅ』『回転木馬』は残念ながら未収録です。 なお、「復刊ドットコム」の「おおやちき復刊特集ページ」はこちらにございます。ご参考までに。
by red_95_virgo
| 2006-02-20 22:56
| book
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Comments(10)
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ふみ
at 2006-02-21 00:13
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大矢ちきの『雪割草』!なんてなつかしい。
私も一時期「りぼん」で育ってましたから、くっきり覚えてますよ。 >すべらせることによって死なせることが >彼のあたしへの“愛”なのだと のところ、たしか二人の横顔が装飾画のように上下に描かれてましたね。 絵柄がミュッシャふうでした。 すべりおわったあと彼女が倒れてゆくスローモーションのような場面も、 それを背にグイドが去ってゆくラストも完璧にうつくしかったなあ。 (もっとも私は雑誌掲載の折見たのみで手元にないんですけど) レッドさんの記憶の引き出し、私にも覚えがあるものも多くて嬉しいです。 大矢ちきの作品は今思っても大人でしたね~。 少年の想念世界を描いた「いまあじゅ」も好きでした。
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ぐはっ…カッコええ…。
いや、その作品は全然知らないのですけど、レッドさんの文章を読むだけで脳内総天然色でございます。読んでみたくなりました。井上選手のお顔も思い浮かびませんが(かくいう私もガッチガチの不感症)、身長がほとんど同じらしいので親近感が湧いてしまう。 素晴らしい物語ですね。
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red_95_virgo at 2006-02-21 15:58
>ふみさん
大矢ちきさんの出現は少女マンガの事件でしたよね、あの当時。 仰るように、独特の髪の毛の表現なんかまさにミュシャでしたし、「マニエリスム」という言葉を覚えたのもちきさんのマンガででした。 追記にも記したんですが、『いまあじゅ』は単行本未収録の、今となっちゃまさに幻の作品になってしまいました。私もリアルタイムで読んだっきりなので細部は忘却してしまいましたが、画力とセンスにぶん殴られるような衝撃を受けた事は記憶しています。当時まんがスクール応募枚数の基本は16ページでしたが、『いまあじゅ』もたった16ページであれだけの世界を描いていたんですね。(同様に16ページで限りない衝撃を受けたのが萩尾望都先生の『半神』でした)
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red_95_virgo at 2006-02-21 16:00
>Mariさん
よかったです、オリンピック不感症が私だけじゃなくて(笑)。 井上怜奈選手は、演技してる時のケバめのメイクとすっぴんの落差が結構ぐっとくる感じです。パートナーによって宙に投げられ、空中で3回転半するスロートリプルアクセルの成功は五輪初だそうで、滞空時間の長さといい、ポーズの美しさといい、「豪快かつ優雅」という感じでみとれました。 『雪割草』は、「よくもこんなほろ苦い男女のドラマが少女マンガ誌で実現したもんだ」とあきれてしまうような素敵な作品です。70年代の少女マンガ事情ってほんとにすごかったなあと今更ながら。 そして私が長身&美麗頬骨男好きになったのも大矢さんの作品の影響です。好例が蔵之介さんです(笑)。蔵之介さんてフィギュアの衣装なんかも似合いそうですよね。ああ見てみたいフィギュアの選手役……。今更無理かも知れませんが、でも挑戦してくれ38歳!(笑)。
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カタリーナ
at 2006-02-22 02:10
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スケートマンガといえば槇村さとる世代の私には、あの「りぼん」がそんな大人マンガを掲載していたことにびっくりしました。
「雪割草」、読んでみたいと思ったら絶版なんですね。(涙 私にとっては、フィギュアといったらペアかダンス。シングルと違って相手があるというだけに、そこに見える「2人の絆」がとても好きなんです。愛や友情だけじゃない、同志としての、あるいはそれ以上の信頼がなければ、投げられたり担がれたり、振り回されたり、あんな怖いことできないですよね。 井上さんのスロートリプルアクセルは、力技じゃない、とても繊細で優雅な回転だったと思いました。 ホント、もっと見ていたかった…。
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red_95_virgo at 2006-02-23 02:48
>カタリーナさん
私も読みましたよ『愛のアランフェス』! あまりに昔過ぎて(笑)もうほとんど忘れてしまいましたけど。『ダンシングジェネレーション』『NYバード』にもはまったなあ……。 仰るようにフィギュアのペアの競技というのは、自立した1人の人間が人としてお互いを信頼し合い高め合う、その濃密な時間を凝縮したようなものかと思います。演技が終わればその濃密な時間も終わり、またそれぞれがひとりになる。けれども「絆」はくっきりと残る。 『雪割草』のラストで、倒れたヒロインは恐らくは死ぬのですが、それを一度も顧みず、一見無情なほど淡々と歩み去る男の目は、美しく滑る彼女のビジョンだけを見つめています。 「スケートをやめて僕と結婚しよう」と言う優しい恋人ではなく、自分を確実に(しかしこの上無く美しく)死なせる男の手を取る。 もう、これ以上私好みの展開などありません(笑)。
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はじめまして
at 2011-02-04 19:52
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「大矢ちき 雪割草」で検索してこちらに参りました。
いままで単行本化されていなかった「回転木馬」がいよいよ刊行されますね。私もリアルタイムで大矢作品に触れていたので、胸が高鳴ります。
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red_95_virgo at 2011-02-05 10:57
>はじめましてさま
はじめまして、コメントありがとうございます! なにかとぼんやりしておりまして、『回転木馬』完全復刻刊行のニュースも知らずにおりました。教えてくださって感謝かんげきです!! 大矢さん作品は文庫化されたりもしていますが、あの華麗な世界を堪能するには文庫の版面はあまりにも矮小といわざるをえませんね。欲を言えば当時の『りぼん』の判型で読みたいところですが、当時のカラーを復刻していただけるだけでもうれしいです。 コメント拝読して速攻予約しました。届くの楽しみです〜。
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はじめまして改め、太郎
at 2011-02-10 16:55
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レッド様
お返事ありがとうございます。 私は「おじゃまさんリュリュ」と「キャンディとチョコボンボン」の文庫本を持っているので、「回転木馬」が揃えば大矢ちき漫画作品を全部揃えたことになります。 しかし、レッドさんがおっしゃるように大矢ちき作品を『りぼん』掲載時と同じ判型で、もしくは縮小なしのオリジナル原稿原寸サイズで読みたい!と強く思っています。 可能であれば拡大して刊行していただきたいくらいです(それはあまりにも無理というものでしょうか…)。文庫本サイズの「いまあじゅ」には、刊行されないよりはマシですが、一抹の悲しさを覚えます(贅沢ですね…)。 ところで先月、都内の喫茶店で他三名の漫画家と大矢ちきさんが合同でイラスト展を開催し、ご本人もお見えになったそうです。私は都合が悪く訪ねることができませんでしたが、お元気そうな様子だったとご本人と会われた方が書いておられました。 もうストーリー漫画は描いてもらえないのかなあ…、いつか描いて欲しいなあ…と思います。
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red_95_virgo at 2011-02-11 16:03
>太郎さま
ふたたびのお運び、厚く御礼申し上げます。 いろいろぱっつんでお返事遅くなってすみません。 そうですかコンプリートですか! おめでとうございます! しかしこうして作品タイトルを振り返ってみますと、いわゆる少女漫画家としては本当に寡作な作家だったのですね。 あまりに情報量の多い(しかも無駄な情報はなにひとつ無い)、豪奢かつポップな絵柄のイメージが鮮烈過ぎるため、なんだかものすごい作品数をお描きになったように錯覚してしまいます。 漫画って、ストーリーやネームもですが、まず「絵」だと思うんです。 「絵」で伝えることが漫画家という表現者の本分だと思うんですね。 絵そのもののうっすい漫画家が何ページ描いたところで、大矢さんの16ページに遠く及ばない、って感じがしちゃうんですよね(笑)。 大矢さんのみならず、70年代少女漫画(24年組など)というものに育ててもらった感が自分にはあり。 良くも悪くも自分がこういう人間になっちゃっていまここでこんなこと書いたりしてるのは、感受性がやわやわとしていた時分に毒も華も備えたあれらを浴びるように享受できた、その結晶のように思います。
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